就活氷河期にパチンコ業界になんとか就職、が…
私が大学で就職活動をしていたのは2005年、いわゆる「就活氷河期」の終わりごろで、笑ってしまうぐらい内定が出ない時期でした。
私も毎日エントリーシートと職探しを繰り返し内定を目指していましたが、結局希望する業界の企業は全て不採用…
途方にくれていたときに、たまたま企業の合同イベントで申し込んだアミューズメント会社から合格の通知きました。
そのアミューズメント会社は全国展開している、いわゆる “パチンコ屋” で、パチンコをやる方なら名前を聞けばすぐわかるほどのパチンコ業界では大手の会社でした。
正直、希望していた業界ではありませんでしたし、聞いていた仕事内容が店舗での仕事だったので、事務職を希望していた私としてはどうしようか迷いましたが、頑張れば本社の事務業務に配属されることもある言われ、畑違いでもやってみようと入社を決めました。
その会社が典型的なブラック企業とも知らずに…
入社して3ヶ月間の新人研修はとても楽しかったんです。
今にして思えば新人研修で既に「?」なこともやらされていました。
体力作りだと言われ、毎日10キロ走らされましたし、
「会社のルールを覚えるためだ!」と、教材として渡された冊子を丸暗記するまで寝かしてもらえないこともありました。
しかし、それでも同期と励ましながら頑張る日々は「社会人になったんだなあ」と青春しているような気になっていたのです。
そんな甘い考えの私だからこそ、新人研修でこんな「?」なことをやらされてもブラック企業だと気付けなかったのでしょう。
働き始めてわかったブラック企業の実態
新人研修を終えると、各店舗に配属されて実地研修になります。
店舗に配属される時
「店舗での実地研修は努力次第で期間が変わる。努力して能力をつけたものは本社勤務になるし、努力しないといつまでも店舗で働くことになる」
といわれました。
ただ、これも今にして思えばおかしな話です。
そもそも職場ごとに定員は決まっているわけですから、本社への異動なんて、本社の誰かが辞めない限りあるわけがありません…。
実地研修では
「パチンコ屋で最も大事なことはお客様を待たせずにドル箱の交換をすること!お客様を待たせずにドル箱を流すこと!お客様を待たせずにカウンターで玉と商品を交換すること!」
と耳にタコができるぐらい言われていたので、自分ができる精一杯を尽くしました。
しかしそれでもインカム(耳につける私にだけ聞こえる音声)から流れるのは、「スピードが遅い!」「お客様対応がなってない!」という罵詈雑言ばかりでした。
店舗のルーチンワークを一通り覚えると、社員としてやるべきことを叩き込まれます。
たとえば女性社員は今後メインとなるカウンターの景品の商品決め。
これはまわりのパチンコ屋に視察に行ったり、コンビニやスーパーを見学したりして、景品に適したものを見つけ、それを上司に提案します。
一方、男性社員は監視カメラの扱いやパチンコ屋の両替機の管理などを学びます。
さらにそれと並行して新人社員には、釘のテストが毎月ありました。
実はパチンコ台の釘は毎日開店前や閉店後に社員が調整するのです。
その「釘打ち要員」になるために、釘打ちのノウハウを叩き込まれるのです。
開店前の早朝から釘打ちの練習のために出勤し、練習が終わったら開店準備をして、開店後は1日中走り回り、閉店後は台の清掃、さらに釘のテストをクリアした人はスロットの設定も叩き込まれます。
本当に理不尽に忙しく、家に帰るのは寝るためだけ。
終電を逃した時は、近くのカラオケに同期の仲間と入り、仮眠して翌朝を迎えるということもしょっちゅうありました。
そして入社して2年が経ったころ、とうとう私の体に不調があらわれはじめました。
まずは原因不明の胃痛と頭痛、そして止まらない吐き気、そして毎朝お店に着くころにはとめどなく涙が流れるようになってしまったのです。
典型的な鬱症状でした。
2年頑張ってみたものの本社への異動の気配もない、このままここにいたら、自分は壊れてしまう。
そう思った私は、ようやくこのブラック企業からの転職を決意しました。
上司に退職の旨を伝えると鬱症状がピッタリと治まる!
私は転職を決意したその晩に転職サイトの「リクナビNEXT」に登録しました。
直ぐに転職サイトに登録したのは自分の決意を揺るぎないものにしたかったからです。
そして次の日、上司に退職を希望する旨を伝えました。
上司からは「根性ないね」と一言嫌味を言われ、それで終わりました。
「根性ってなんだ!仕事は部活じゃねーだろ!」
そうキレてやりたい気持ちにもなりましたが、実際はキレる気力も私には残っていませんでした。
不思議なもので、会社を辞めると鬱の症状はピタリと止まりました。
おそらく本格的な鬱病にはなっていなかったのでしょう。
私の同期には、やはりこの仕事で完全な鬱病にかかってしまい、退職後も社会復帰できないでいる人もいました。
そう考えると私はギリギリのところで上手く逃げられたのかもしれません。
そういえば先日NHKを見ていたら、ある心療内科医が
「鬱病になりそうなら勇気を持ってその状況から逃げること」
と言っていましたが、本当にその通りだと思います。
英語が得意だった私に企業からオファー、そして採用に
転職活動を始めてから3週間ほど経ったとき、「リクナビNEXT」を通して私にあるオファーがありました。
それはなんと車のパーツを輸入・輸出をする貿易会社からのオファーでした。
と言うのも、私は留学経験があり英語には自信があったため、転職サイトにはその旨を書いておきましたし、さらにパチンコ屋でも、興味本位で入ってくる外国人のお客様相手に対応したり、パチンコのやり方の英語のハウツー冊子を作ったりしていましたから、その実務経験もアピールポイントとして書いておいたからです。
その貿易会社との面接では、前職については職種を聞かれただけで、それ以外は、その貿易会社の仕事内容、私の英語力について、あとはプライベートや趣味などの話でした。
これは後で聞いた話なのですが、人事担当者もパチンコ業界にブラック企業が多いことは承知していて、私の書類を見て「ああ、相当苦労している人だな」とすぐに分かったそうです。
しかし、それでも2年間働いたことや、腐らず英語のハウツー冊子を作ったりしていたことが、人事担当者の目にとまったとのことでした。
そして私はその貿易会社に採用され、今も貿易事務の一員として働いています。
海外相手の仕事は時差があるため、残業をすることもありますが、前職と違い、残業をしたら翌日は遅く出勤するなどの決まりがしっかりしているので体への負担はありません。
また、この仕事は一人で数国を担当しながらも、通関から工場への納入、工場からの配送から通関、海外工場への到着まで、基本的には全て自分1人で管理するため、自分が担当する仕事が終われば、早く帰っても誰にも咎められることはありません。
そのおかげで、私は今の仕事に転職してはや3年以上たちますが、会社に行きたくないと思ったことは一度もなく、毎日楽しくやりがいを持って働けています。
本当にあのとき転職を決意してよかった。
鬱病になる前に逃げてよかった、とつくづく思います。
今の仕事が最悪なら転職すれば必ず好転する
今この記事を読んでくださっている方の中にも転職を考えている方はいるでしょう。
それは、もしかしたら私と同じようにブラックなパチンコ業界で働いている方もいるかもしれません。
そういう方たちに私からメッセージを送るとしたら、
「ブラック企業に何を期待しても無駄。状況が変わることはない」
「鬱病になったら仕事を辞めてもなかなか治らない、なる前に逃げることが大切」
そして
「その会社よりマシな会社は必ずある」
ということです。
幸い私は「マシな会社」どころか、天職と思えるような仕事に出会うことができましたが、そうでなくても転職サイトや求人誌には、前職場よりは間違いなく良いだろうと思える求人が沢山ありました。
今の仕事が最悪なら、転職すれば好転するのは間違いありません。
私は自分の経験から、鬱病になるぐらいなら、いっそのことその場から逃げ出して、新しい世界に飛び込んでしまったほうが幸せになれると信じています。
転職サイトは在職中に登録することで視界が広がる
転職サイトを利用するなら在職中に登録しておくことをお薦めします。
私が登録した転職サイトは「リクナビNEXT」です。
私の場合は、退職の決意と転職サイトへの登録を同時にしました。
転職サイトは私のように企業からオファーがくることもありますが、それ以外は新着求人のお知らせメールがくるだけですから転職をせかされることはありません。
ですから「もっと早く登録しておけばよかったな」思います。
そうすれば、いろんな求人を見ることができて、心に余裕が持てたはずです。
とにかくブラック企業で働くと精神的に追い込まれて、辞めることは考えられても、次の仕事のことまでは頭が回らなくなります。
これがさらに進行すると、今度は辞めることさえ考えられなくなり「死ぬ」という選択をしてしまうのでしょう。
そうならないために、自分の視野を広く保つために、転職サイトへの登録は在職中に済ませておくことが大切だと思います。